皆さん、こんにちは。リレイション徳島スタッフ馬渕です。
今回は、Learning Journey番外編として10月9日に神山で実施した、おためし神山塾のレポートです。
Learning Journey(旅するように学ぶ)と題して毎月おこなっている地域滞在型研修ですが、個人的に今回はこの名前の意味やLearning Journeyの意義を考える回となりました。
Learning Journeyとは?
地域の足もとの暮らし、仕事、人々からの学び。
〇「知っている」ではなく、体験し、五感を使って感じること
〇感じた自分は何を思うのか
〇その土地にある”ありのまま”と触れ合うことで自分の今を知ること
この先の自分の生き方、暮らし方、働き方、大事にしていること、つまりは「自分の価値観」を考える、きっかけのきっかけの中から「生きる」を学ぶ地域滞在型研修です。
寛容性と創造性のまち 神山
今回は募集していた神山塾16期に申し込みをされた方が参加してくださいました。
前日に東京から来られて、お子さんも一緒に参加。
今回のコンテンツは神山の発展の礎となった神山アーティストインレジデンスの作品が多くある創造の森アートウォークと、地域の方や卒塾生との昼食交流会を行いました。
まず、アートツアーへ。
上一宮大粟神社からスタートして屋外(森の中)に展示されているアート作品を山道を歩きながら鑑賞するツアーです。
神山は「寛容性と創造性のある町」と紹介されることがあるのですが、それにはこの神山アーティストインレジデンスの活動と、神山の住民の方々との関わりが大きく影響しているのかなと思います。
もともと四国は、八十八か所を巡るお遍路文化があり、外からやって来た人を受け入れお接待(お世話)する文化があります。
さらに神山には1400枚を超える神山襖絵があり、これは江戸から大正にかけて、集落に招かれた絵師達が庄屋や富豪の屋敷に滞在しながら地域住民の協力によって作られたものとされています。
この現代版とでもいうべき、神山アーティストインレジデンス。
招聘アーティスト3名が神山に2ヶ月間滞在し、神山でしか経験できない作品作りをしています。
アーティストたちが神山で暮らしながら作品を作るために、神山の方たちが住む家や、日用品、車や食料など必要なものの手配などを手助けしてこられた流れがあります。
芸術やアートがわかる/わからないは関係なく、ボランティアでお手伝いが続いています。
地域の人達が世界各国からやってきた芸術家とふれ合い、神山町の可能性を再確認し、地域の新しい価値や交流を生み出すことに繋がっています。
そんな交流の中で作られた作品が多く存在する大粟山。
1時間もあれば回れるぐらいの小さな山ですが、今回はお子さんの参加もあり、ゆっくり歩いてまわることにしました。
前日が雨だったこともあり、歩く山道には沢ガニが何匹も!
歩き始めた最初から歓迎してくれました。
スタート地点の上一宮大粟神社は穀物や料理の神様と言われている大宜都比売命(オオゲツヒメノミコト)が祀られています。
私は今まで食べ物関係の仕事をしていたので、神山に来てから時間があればよくお参りをさせていただいている神社です。
アート作品の鑑賞とは言いつつも、「この作品は宇宙をイメージしていて普遍的な……」といった難しい作品の解説を聞くような鑑賞方法ではなく、森を歩くこと、葉っぱを踏む音を聞くこともすべてが非日常の体験を感じていただきました。
中腹にある「神山金継」という作品。
欠けた陶器を補修する日本の伝統的な金継ぎ技法を利用した作品です。
神山は戦前から林業で栄えた町で、木を売り買いする商談が終わったあと宴会をする仕出し屋さんが多くありました。
しかし林業が衰退して宴会も少なくなり、使用されなくなった食器がたくさん残されました。
その使われなくなった食器や、一般家庭に眠っていた食器を金継で繋いだ作品です。
レンコンの形の箸置きやコーヒーカップなど現代的な物も混ざっていて、普段生活で使うものが使用されているので、お子さんにも目から分かりやすい作品だったようです。
とてもインパクトのある作品です。
大粟山の頂上にある「人間の時間を抱く等高線」という作品を見つけた際に、参加されたお子さんが、「夜に動物さんたちが集まってお話するような場所だね」との言葉。大人では考えつかない想像力溢れる感想に触れることができました。
森の中を歩きながら、神山のNPO法人グリーンバレーのお話や、整備活動の森づくりのお話をさせていただきました。
今現在の輝かしい神山の礎には、地域の方々の継続的な活動があってこその神山であることもお伝えすることができました。
歩いて降りる途中、お子さんから「もう疲れてしまって歩きたくない!」との声が。
困ったなーと思っていたら名案が!
「下まで降りたら道の駅で売っているアイスを食べよう!」
との一声でお子さんのテンションがMAXに!
一気に下山することができました。
下山してから、リレイションの神山拠点でもある梅星茶屋で昼食交流会!
鉄板があるお店なので、野菜炒めを作り、他には前日が梅星茶屋のある神領地区のお祭りだったため、お寿司や赤飯、などのご馳走を神山のお母さんといわれる粟飯原國子さんが作ってくださいました。
地域で暮らすということ=生きていくこと
なぜ今回、Learning Journeyの意義を考える回となったのか。
今、地域や暮らしを考える体験ツアーは神山以外でも本当に多くあります。
さまざまな方の意見を聞いて考えが整理されることも大事なのですが、
その中で得られるものが、単なる共感やその時の満足だけではなく、どれだけその土地で「生きる」に繋がっているかが大事なのだと感じたからです。
「暮らす」ためには、家、仕事、お金、車など必ず必要なものがあります。
自分でなんとかしないといけないものや、誰かに頼んでみるもの、頼むのであればそこに関わり合い、つまり関係性が必要になってきます。
それは意見を聞いたその場だけで作られるものではなくて、少しづつ「築かれて」いくものだと思います。
そしてそれが、リレイションが大事にしていることや、神山塾の学びの基へと繋がっていくのではないかと私自身感じたからです。
今回の参加者の方から、「このような条件でもツアーに参加できますか?」「ツアーの後の予定はこんな感じです」などご要望や予定をお伝えいただくことで、私自身もできる範囲で対応したり、ご協力できればと思いました。
「いま自分の生活に必要な物はこれなので、これがあれば譲っていただけると嬉しいです」など周りに伝えておく。
自分の意見や気持ちを伝えたり、意見を言うことが自分が快適に生きていくことに繋がるのだと思います。
そこに遠慮や謙遜は必要なく、「自分の環境を自分で作る」ことになっていくのだと思います。
暮らすは生きる力
生きる術を手に入れるのは勉強ができることとイコールではないと思います(実際には勉強の賢さが重要な場面も多くあると思いますが)。
神山塾でも学ぶことになる「社会人基礎力」を自分の強みと掛け合わせて強化したり、弱みを知って協力を得たりして進んでいくことが【生きる】に繋がるのだと思っています。
物事は思ったようにはならない、行動したようになると分かっていても、です。
結局、やるかやらないか、行動にうつすかうつさないか、
想っていても言葉にするかしないかですべてが変わっていきます。
自分で決めることも大事ですが、しなやかに柔軟に対応することも大事。
ここまで書いているすべてのこと、私自身、頭でわかっているのに実際にはできていないことばかりです。
上手にできる人を見ると正直、悔しいような、羨ましいような感覚になります。
幼少期にこうしたいのに、大人に言ったら「そんなことしちゃダメ」と言われた、というような体験が思い出されることがあるのですが、今回参加のお子さんを見ていると、学ぶことがありました。
それは「つまらない」や「疲れた」の感情を周りに配慮しつつ出すことで、逆に周りが気を使わずに過ごせるんだということです。
それは、アーティストと神山町の方々との関わり方と似ているのかもしれません。
世界各国からやってきた芸術家と「ありのままの神山」で接し、触れ合うことで、神山の人たち自身が神山の素敵さに気づき、可能性を再確認できたことで、地域の新しい価値や交流を生み出すことに繋がっている。
私も整っていないありのままの自分を伝えることで、
自分が当たり前にできる能力や可能性に気づくきっかけをもらって、
新しい自分の価値に気づけるように、相手に自分を伝えていこうと思います。
(今回のレポート内の写真は、参加者の方がプロのフォトグラファーさんということで、
その方の写真を使わせていただいています。ありがとうございました。photo by いしはらなつか)
この記事を書いた人
馬渕直子
京都府のはしっこ、海の京都と言われる京丹後市出身。神山に来るまでは京都市内で栄養士・調理師・管理栄養士として「食」に関わる仕事に携わってきた。神山塾14期に参加するため、2022年8月に徳島に。料理を作ることも、もちろん好きだけど、何より食べることが大好き!旅が好きで行った先の、知らなかった食材を買ってきて調理したり、地元の方に教えてもらいながら郷土食を作ったり、その土地に根ざした「食」「ローカル」「田舎」「暮らし」が自分の中のキーワード。今までは栄養士として食のサポートをしてきたが、これからは「食べること=生きること」と捉え、自分が神山で変化できた「ワクワク生きるため」のサポートをしたいという想いでリレイションへ。
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