【レポート】越智清仁さん 就職氷河期世代活躍支援セミナー 「社員の個性を生かした職場づくり −働き方の多様性に対応した新しい人材採用・育成のあり方−」
2022年3月25日(火)に徳島県JA会館にて、
企業向けの第3回就職氷河期活躍支援セミナーを開催しました。
講師は愛媛県今治市の社会福祉法人来島会 理事長の越智清仁さん。
この記事では当日のレポートをお届けします。
【講演全編収録動画】
講演の全編を無料でご視聴いただけます。
レポートと併せてぜひご覧ください。
◆就職氷河期世代活躍支援セミナーとは?
徳島県の就職氷河期世代(概ね35〜54歳の方)が社会で活躍することを支援する事業として、就職氷河期世代の求職者の方と、この世代の雇い入れを検討している企業の方、それぞれに向けたセミナーを開催しています。2021年度株式会社リレイションが徳島労働局より「就職氷河期世代活躍支援都道府県プラットフォームを活用した支援」事業として委託され実施しています。
社員の個性を生かした職場づくり
来島会さんは、「すべての人が『障害』を感じることなく自分の意思で質高く暮らすことのできる地域社会の実現」をビジョン、「障害支援のスタンダードとなる」をミッションとして掲げ、愛媛県今治市で各種福祉施設の運営などをおこなっている社会福祉法人です。
障害者や高齢者の支援という事業内容そのものが、
多様性のある社会を目指すものですが、
それを行う組織自体もスタッフの個性を尊重したものであろうと、
社内外でさまざまな取り組みを実施されています。
・地域での取組
今治市の桜井地区を拠点におこなっている
地域プロジェクト「桜井プロジェクト」では、
社内で参加したいスタッフを募集し、有志で活動中。
リレイションもお手伝いさせていただいています。
なぜ社会福祉法人がまちづくりプロジェクトを行うのか? というと、
「福祉という言葉の語源はドイツ語のヴォルファート(Wohlfahrt)という言葉で、
“幸福”や”望ましい状態に変える”ことを意味しています。
地域をより良く、誰もが暮らしやすい場所に変えることも福祉の活動の一つと考えています」
とのこと。
普段の仕事からしばし離れて、海岸清掃活動などに取り組む時間を持つことを通して、チームメンバーの相互理解が進むなど、仕事へも良い影響があったようです。
【参考】
桜井プロジェクトへの思いとこれから−プロジェクトメンバーへのインタビュー
・里山スタジアム事業
現在、愛媛県今治市をホームタウンとするサッカークラブ「FC今治」の新しいサッカースタジアム建設のプロジェクトが進行中です。
その名も「里山スタジアムプロジェクト」。
来島会さんは、里山スタジアム内に世代、ジェンダー、障がいの有無などを問わず多様な人々が集えるような複合福祉施設を建設し、管理、運営を行う協力事業者として参加しています。
「障がい者支援」「高齢者支援」ではなく、来場したすべての人がコミュニケーションしあい、溶け合うような関係性を作れる場づくりに取り組んでいます。
そして、いずれはこの施設内でできた関係性を、施設の外にも広げていきたいと目標を話してくださいました。
・社内での取り組み
①自己理解のワーク
社内では「MBTI」というメソッドを活用した自己理解のワークを取り入れています。
福祉は対人サービスであり、
相手を理解するためには自分を理解し、
自分と人は違うということを知る必要があると考え、
自己理解を重視しているそうです。
ワークは越智さんが自らが主導し、約4時間をかけて行うものだそう。
参加したスタッフのなかには、
「奥さんとの関係が良くなった」という方もおられ、
仕事だけではなくプライベートにも良い影響を与えているそうです。
②外国人技能実習生の受け入れ
そして社内での多様性を受け入れる取り組みのひとつとして、
外国人技能実習生の採用もおこなっています。
外国人技能実習制度というと、
制度を不正に利用した事例などがニュースなどで報道されることもあり、
良いイメージを持っていない方もいらっしゃるかもしれません。
越智さんは、制度の導入を検討するにあたり、
外国人技能実習生の基本理念を確認したそうです。
技能実習の基本理念とは
「技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として創設された制度」
というもの。
この理念のとおりに運用されていないということが不正や悪いイメージの原因だと考え、「来島会ではこの理念どおりに運用しよう!」と決め、準備が整ってから導入に踏み切ったということです。
準備とは、導入にかかわるコアメンバーが来島会としての技能実習生の受け入れについての考え方を理解し、前向きに捉えてくれる体制が整うということ。
こうしてミャンマーから2名の実習生を受け入れたことで感じたメリットは次のようなものでした。
・考え方や生活習慣が違う実習生を受け入れることで、違った視点で物事を考えられるようになった。
・業務の標準化として業務マニュアルを作成し、介護技術のスタンダード化が進んだ。マニュアル作成に当たり業務の見直しができ、生産性向上につながった。
・日本語が得意でない実習生とどうやってコミュニケーションをとるか考えるなかで、スタッフ同士のコミュニケーションが促進された。
などなど、さまざまなプラスの効果があったとスタッフの方も感じているそうです。
多様性のあるチームづくりをすることの好例ですね。
最後に、こうした取り組みを行うなかで、
越智さんが大切だと感じたことを共有してくださいました。
- どのような考え方・理念で進めるかを定める。
- それは肯定的に捉えられるものである。
- それを推し進めるチームを作る。
- ステレオタイプな考え方をやめる。
- さまざまな考え方や文化を受け入れる環境
企業経営のなかで発生するさまざまな課題に対応していくうえで、
新しい取り組み、冒険的なプロジェクトを行わなければいけない場面があると思いますが、
そのようなときにとても参考になる考え方なのではないでしょうか。
動画では講演全編を収録しています。
気になった部分がある方はぜひご覧くださいね。
トークセッションも行いました
後半では、越智さんと、徳島県の屋根材メーカー・フジスレート社の顧問・企画戦略・人材育成担当でもある祁答院がトークセッション形式でお話させていただきました。
ここでは、参加者の地元企業の皆様にもお話をうかがいながら、
このコロナ禍における人材採用・育成やチーム作りについての課題と解決方法について意見交換をしました。
こうしたセミナーをきっかけに地域企業が連携し、
徳島の「働く」「育てる」を自分ごととして、より良くするきっかけになればと思います。
就職氷河期世代支援の取り組みは今年度も継続していきますので、
どうぞよろしくお願いします!
この記事を書いた人
西川 萌子
東京常駐スタッフ。2018年にキャリアコンサルタント資格を取得し、神山塾生のキャリアコンサルティングも担当。最近、サーカスの曲芸を練習する機会があり、皿回しができるようになりました。次はジャグリングボールにチャレンジしようと目論んでいます。
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