山師の人生話-誰かの足しになる仕事- | KATALOG
山師の人生話-誰かの足しになる仕事-

山師の人生話-誰かの足しになる仕事-

小松 輝
小松 輝

2016.08.08

インターンスタッフの小松です。
みなさん、こんにちは! いつも読んでくださりありがとうございます。

今日は葉っぱビジネスを展開する、「いろどり」で有名な人口2000人の町、徳島県上勝町の山奥で暮らしている松畠伯徂さん(通称はくやん)に会いに行ってきた日の話です。

はくやんと出会ったのは、2年前に大学の授業で実施したヒアリング調査がきっかけ。
どこの誰ともわからない学生の質問に快く答えてくれて、料理まで振舞ってもらった時のことは今でも忘れられません。

はくやんの家のすぐ横を流れる川。寝る時には、川の音に耳が慣れるまで眠れないほど近い。
はくやんの家のすぐ横を流れる川。寝る時には、川の音に耳が慣れるまで眠れないほど近い。

はくやんの家は、徳島市内から2時間ほど車を走らせるとたどり着きます。
山肌に沿うようにして建っている家の横に流れる川は、大きな石がゴロゴロと転がっていて、近隣には家が5軒ほどポツポツとあるだけ。
初めて訪れた時には「こんな山奥に住んでいる人がいるんだなぁ」と思ってしまいました。

 

おう、来たか

左上がボウゼ寿司。いつも行くたびに、山の人にとってご馳走の魚を用意してくれる。
左上がボウゼ寿司。いつも行くたびに、山の人にとってご馳走の魚を用意してくれる。

初めて会った時から、ここを訪れるのは今回で4度目。
特に何をするわけでもなく、ご飯をご馳走になって一緒にお酒を飲んで、
昔の話やこれからの話、はくやんの「のど自慢」を聞いてたくさん笑ったら、寝て次の日の朝に帰る。
お土産こそ持っては行くけれど、本当にただ会いに行っているだけです(笑)。

なのに、毎回家に遊びに行くと「おう、来たか」という言葉で迎え入れてくれて、たくさんの話を聞かせてくれます。
この日は、街から若者がやってくるということで近所のおばさんも呼んでくれて、はくやんと僕の3人での宴会。
上勝町には、祭りといえばボウゼ寿司という文化があるらしく、最高のおもてなしを用意してくれました

 

寝て食うだけではいかん

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炭について説明してくれるはくやん。

20歳の頃から林業に携わり、7〜8人の従業員を抱えて町内にある山の木を切り売りして、生計を立ててきた、はくやん。
若い時から仕事人でよく働き、町内の人から頼られていたのだとか。
今でも仕事は続けていて、猟に木の伐採にと休む暇はないそうです。そんな中でも炭を作る仕事は楽しいらしく、はくやんが運転する軽トラックで炭窯がある場所へ連れて行ってもらいました。

1回の釜に入れる木材の量は、4トン。
3日間釜で火を焚いて、5日間釜の中で冷えるまで置いておくと360キロぐらいの炭が出来上がるそうです。
3時間に1回、炭釜に木を焚べに来るのですが、6〜7kgある木を軽々と持ち上げて運ぶ姿を見ていると、81歳という年には思えず、山で暮らす人の力強さを感じました。

釜の中の様子を確認することは最後までできません。
炭がうまくできているかどうかの判断は、「煙突から出る煙の色と匂いでわかる」と言っていたけれど、僕には全くわかりそうにありませんでした(笑)。

ここで作られた炭は、町内にある商店に卸しています。この炭は「赤地」という種類で、火持ちがよくて火力も強いながら静かに燃えるのが特徴。
徳島市内にある焼肉店などにも売れていると言いながら、出来上がった炭を自慢げに見せてくれました。

 

ほら、地域の人のために働かなあかん

いつも飲むお酒は、焼酎のグレープソーダ割り。
いつも飲むお酒は、焼酎のグレープソーダ割り。

はくやんは、
「人は生かされている。今の仕事も、町の人たちが必要としてくれるからこそ、続けられる」と常々言っています。

猟友会に所属して猟に出かけているのは、町の人たちが獣害で困っているから。
林業の現場に出るのも、指導者としてやらなければいけないことがあるから。
「いつでも仕事はやめてもええんじゃけどな」とあっさりと話すその口調とは裏腹に、楽しそうな顔が印象的でした。

「炭じゃって、やらなんだら町の商店やって売り上げが減って苦しいでえの。やっぱりやめさせてくれんわな。地域のみんなが生活しよんだから、その生活の足しにできるんならそれに越したことはない。やめたってかんまんけど、店が潰れたら地域も寂しいでの」
「わしは、8人兄弟の6番目じゃけど自分の家をこの集落で建てた。当時の集落では、長男以外の者が新しい家を建てるなんてことは、珍しいことだったけん、自分の家を建てたことを馬鹿にされとった。ほれを見返すためではないけど、町の人を雇って給料をやることで、身を立てようとして、人を使って仕事をしてきた。ほんな時分が基礎にあるけん、みんな今でも慕ってくれる」

自分の仕事は、人を生かすことにつながっているという自負が、この人の原動力となって、今まで元気に働き続けられてきたのではないのかと思いました。

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「また来ます」という挨拶に、
「まだ見舞いには来んでええけんの(笑)!」
と冗談で返しながらも、最後まで笑って見送ってくれたはくやん。

何度会っても、話の種に尽きることはありません。
まだまだ僕が知らない、はくやんの人生で培った経験や知識、面白い昔話や苦労話がたくさんあるはずです。
もっともっとはくやんの話を聞きたかったけれど、それはまた次の機会に。

 

この記事を書いた人

小松 輝

小松 輝

1994年生まれ、徳島県出身。浦幌町担当スタッフ兼、KATALOG編集長。大学2年生の冬にRELATIONと出会い、大学卒業とともに浦幌町へ。総合旅行業務取扱管理者の資格を活かして、2019年春から旅行業をスタートさせます。いじられるのが好きで笑い上戸。何かとよく笑います。

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