こんにちは。神山塾KATALOGコースの左治木です。
前回の記事では蔵本周辺の散策をレポートしましたが、
あれからすっかり冬到来の季節となりました。
どんなに寒くても、たまにふらっと外に出て散歩をしたくなります。
ということで、2回も書き続ければシリーズになる、
今回は蔵本周辺散策シリーズ第2弾として蔵本駅のお隣、
鮎喰駅近くにある商店街の散策レポートです。
第1回の記事はこちら。
【過去記事】蔵本を取り巻く水が醸し出すもの−KATALOG WEB
“周辺”の範囲が広くないか?と思った方、そんなことはありません。
これにはちゃんと理由があるのですよ。
街並みは突然にあらわれる
鮎喰駅を下りてから眉山に向かってまっすぐ南に進むこと約3分。
ちょうど伊予街道と鮎喰駅の中間地点の交差点(地図1の人アイコン)で立ち止まると、
左右に少し古い木造建築が並んでいます。
ここが今回取り上げる商店街のある通りです。
地図1でいうと青色のラインを引いた箇所です。
この商店街、不思議なことに突如として現れます。
というのも、鮎喰駅からは離れた位置にありますし繋がりが全くないのです。
周辺は田畑や住宅街ですが、住宅街の中でも割と端に位置しますし、
なんでしょうか、地続きなのに、
この商店街だけ周囲から切り取られたかのように感じます。
散策してみると、商店街には菓子屋に金物店、酒屋に米殼店、
なんと醸造所まであります。
そして建物が良い感じに古いです!
黒塗りの壁に、二階が低い造り。
明治時代まで遡れそうな予感がします。
徳島市内ではあまり目にしない建物の雰囲気に、
ひとり興奮してしまいました。
なぜこんなところに古い町並みの商店街が残っているのか?
その答えは近くの文具店のお母さんが教えてくれました。
繋がる道
たまたま通りかかり、吸い寄せられるように入ったのがかまだ文具店さんです。
土間に商品が並ぶ中、帳場の奥の部屋からお母さんが出てきてくださいました。
そして私の姿を見て早々に一言、
「ここらへんの歴史を調べに来たの?」
……あれ、顔に出ていましたか(笑)?
どうやら年に数回は地域史を調べている方が訪れてお話を聞いていかれるようです。
これは格好の機会、根掘り葉掘り教えていただきました。
お聞きした内容からかいつまむと、以下の通りです。
◯この商店街は昔の伊予街道(伊予街道の起点は徳島城)沿いにある。
現在の伊予街道は道路拡張のために新設した道。
◯このお店の周辺はかつての徳島城からちょうど一里の距離にある。
徳島城から鮎喰川までの地域が城下町だった。
鮎喰川を流れてくる神山町の材木や、
伊予街道を通じて西から入ってくる荷物の荷揚げ場所で、
商人が集まり城下の玄関口として栄えた。
→一里を示す一里塚ならぬ、一里松があったそうです。
今はもうないのですが、跡地に石碑が置かれています。
◯佐古郷町13丁目という町名だった時期もあった。
→文献によると、江戸時代に佐古町(現在の佐古一番町~五番町まで)に対して、
新興の町場であった当地域(現在の佐古五番町から以西)を佐古郷町と名付けたそう。
◯建物は150年前位のもので、文具店は100年前から続けている。
昔の街道が通っていたんですね、非常に合点がいきました。
旧伊予街道は前回の記事で触れた佐古町にある商店街を通っているのですが、(地図2)
さらに言えば私たちのいる蔵本BASE(地図2家マーク)の前を通っていまして、
そしてこの商店街まで続いていたわけです。
佐古町というと今でもさまざまな問屋が立ち並んでいますが、
ここもかつては同じような風景が広がっていたのかもしれません。
それにしても、13丁目なんて数字、北海道で見た以来の丁数の大きさです(笑)。
こんな風に点で見えていたものが線で繋がっていくのが面白くて、
散策はやめられないのです。
線が面になって層になると「あの時代」「この時代」と歴史のグラデーションが
目に見えてくるようです。
全部繋がった先には何が見えてくるのか、楽しみです。
観察すると見えてくるもの
さらにお話を伺っているとお母さんが1枚の絵を出してくれました。
この文具店を中心とした周辺が描かれているのですが、
これ実はお母さん作なのです。
うまい!
街並みを写した写真がないため、説明用に描いたそうです。
川の色、石積みの形、人物など、
当時の様子を再現するために何度も筆を入れ直したとか。
(今、この文章を書いていて気づいたのですが、
かまだ文具店さんの左隣の家の屋根色がストライプのように見えますね。
写真5で実物を見ると、この絵の当時のまま残っていることがわかります。
なぜ、屋根瓦の置き方を交互にしたのでしょうかね、今度聞いてみます。)
写真が下手ですみませんが、絵の構図と同じ方向から撮ってみました(写真5)。
明らかにお母さんの絵と現在の写真で、風景が違う箇所が1点ありますね。
正解は川。今は道路になっています。
この話を聞いた時、思わず外に出て道路を確認しました。
某『ブラ◯モリ」番組で度々見かける、
「川の流れていた跡にできた道路は曲線カーブを描いている」。
場面を目の当たりにし、ひとりまた興奮。
写真に引いた青い線が、絵で川になっている部分です。
見事に蛇行しています。
道路を見てこんなにも心動かされる瞬間がくるとは、
思ってもいなかったです(本当にミーハーでごめんなさい)。
写真6を撮影した際、ふと、足元に目をやると四角い人工物な石が転がっていました(写真7)。
「常盤橋」と彫られています。
お母さんの絵をもう一度よく見ると、
川にかかっている橋に「常盤橋」と描かれています。
「これかーー!!!」
もう興奮冷めやらぬ状態です。
パッと見ただけでは何の意味もない石に見えますが、
原因がわかるとそこに在る意味がわかるものですね。
この交差点にお立ち寄りの際は足元にもご注目ください。
見えない繋がりが出来てくる
さて、興奮もひと息ついたところで、
この川(正確に言えば用水路だった模様)が
どこから流れてきたのか気になりました。
後日、絶妙なカーブの道路を辿ったところ、
到着した先は袋井用水。
前回の記事を書く際に知ったここら辺の主な史跡スポットですが、
まさか川跡からここに辿り着くとは思いませんでした。
思わず「おー、繋がった」と、ひとり感嘆。
“史跡”として見た時は正直「なんちゃないなぁ」と思っていましたが、
改めて訪れてみると、「いい景色だなー」と感じ方が変わりました。
おそらく、この周辺の土地のファンになったからだと思います。
背景を知り、自分の中で見えない繋がりがみえてきたという面白さと、
教えてくれた文具店のお母さんの存在が大きいと思います。
蔵本周辺散策シリーズとして、
1回目は“水”、2回目は“道”をテーマに、
さまざまなスポットの繋がりを見てきました。
前回の記事を書く際に訪れたお店の方から、
「ブログを書くなら、五感を使って、
蔵清水のように目にすぐ見えるものじゃなくて、
目に見えないものをみるんだよ。
それはパッとみてわかるもんじゃない、
じっくりと向き合わないと感じ取れないからね」
とアドバイスをいただきましたが、まだまだですかね。
目に見えるものばかり追っていますが、
見ようと意識しなければ見えない繋がりが面白いのだと、
このブログを書きながら再認識しました。
少しくどく書いてしまいました。
今回お世話になった「かまだ文具店」のお母さんからは、
ここには書ききれないくらい面白いお話を聞かせていただきました。
そんなお母さん、非常に字が達筆です。
ご祝儀袋等を購入頂いた方は字を書いていただけるのですが、
もう素敵な文字なのです。
どんな場面でどんな人に渡すのか、
丁寧に想像しながら描いてくださいます。
字に自信のない方、困った際はかまだ文具店までいかがでしょうか~。
今回訪れたお店
・かまだ文具店:徳島市鮎喰町1丁目115-1
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