2021年10月12日(火)に徳島県JA会館にて、企業向けの第一回就職氷河期活躍支援セミナーを開催しました。
講師はクリエイティブプロデューサーの栗栖良依さん。
この記事では当日のレポートをお届けします。
以下の動画では、講演全編をご視聴いただけます。
2022年3月末までの期間限定公開ですので、お見逃しなく!
就職氷河期世代活躍支援セミナーとは?
徳島県の就職氷河期世代(概ね35〜54歳の方)が社会で活躍することを支援する事業として、就職氷河期世代の求職者の方と、この世代の雇い入れを検討している企業の方、それぞれに向けたセミナーを開催しています。2021年度株式会社リレイションが徳島労働局より「就職氷河期世代活躍支援都道府県プラットフォームを活用した支援」事業として委託され実施しています。
栗栖さんに講演をお願いしたワケ
クリエイティブプロデューサーで、今年開催された東京パラリンピック開閉会式のステージアドバイザーを務められた栗栖良依さん。
障害の有無を問わずさまざまな人が参加できるアート活動の場を作るNPO法人スローレーベルの理事長でもあります。
リレイションとは、むかし栗栖さんが神山で創作活動をされたときからの長いお付き合いです。
「栗栖さんにお願いするなら障害者雇用のセミナーなのでは?」という疑問があるかもしれません。
しかし今回、就職氷河期世代の活躍を支援するセミナーで講演をお願いしたのは、「多様な人が活躍できる組織・チーム作り」という課題について考えるためです。
就職氷河期世代の方が困難な状況に置かれているのは、新卒時に社会情勢の悪化によって非正規雇用で就職せざるを得ないなど、思うようにキャリア形成できない事情があった方が多数で、単なる自己責任ではなく、社会全体として解決していくべき課題です。
これは、障害者やほかのマイノリティの方が、社会の受け入れ体制が整わないことによって、外に出て自由に活動することが難しい状況にあることとも共通する部分があるのではないでしょうか。
企業にとっては、この世代の方を雇い入れることで人手不足などの企業課題の解決につながる可能性があります。
また、従来とは違うタイプの人材を組織に受け入れることで、思わぬ発想の転換やビジネスのチャンスが生まれることもあると思います。
そのため、障害の有無を問わず、これまで社会参加のチャンスを得ることが難しかった、能力も経験も事情もさまざまな人と共に働くために必要な考え方を共有したいという思いがあり、今回栗栖さんに講演をお願いしました。
個性が輝く職場を作るには?
栗栖さんはご自身が病気により右下肢機能全廃の障害者となったことをきっかけに、障害を持つ方とのものづくりやアートの創作活動を開始。
しかし、その道のりは平坦なものではなく、どうしたら障害を持つ人に活動に参加してもらい、活動を広げていくことができるのか、さまざまな試行錯誤を重ねながら発展していきました。
そのなかで「ソーシャルサーカス」という取り組みと出会い、SLOW CIRCUS PROJECTを立ち上げることとなりました。
ソーシャルサーカスとは、サーカスの技術を取り入れたワークショップを通して、コミュニケーション力や身体能力、想像力、危機管理力、チームワークなどを養っていくことができるプログラムです。
サーカスには一歩間違えると危険な技もあるため、注意深くリスクコントロールをしたり、仲間同士しっかりと信頼関係を築いたりする力が不可欠です。
また音楽に合わせて体を動かすので、心身の健康に良いというメリットもあります。
ソーシャルサーカスで養うことができる能力は、障害の有無を問わず、誰にとっても社会で生きていくうえで必要な力です。
スローレーベルでも、障害のある人だけにこのソーシャルサーカスのプログラムを行うのではなく、例えば学校やビジネスマン向けのワークショップを開催するなど、幅広く行っています。
こうした取り組みを安全に行うために、スローレーベルでは、心理的・身体的に安全な環境を作るメンバーであるアカンパニストやアクセスコーディネーターといったスペシャリストを作り出していきました。
アカンパニスト/アクセスコーディネーターとは?
「アクセスコーディネーター(障害のある人が参加するための環境を整える人)」
「アカンパニスト(一緒に創作活動をする人)」
環境面、創作面、物理面、心理面…… 様々な側面から、アート活動をサポートする役割を果たす存在が、アクセスコーディネーターと、アカンパニスト(伴奏者)です。アクセスコーディネーターもアカンパニスト(伴奏者)も、主体的に創作の場づくりを担う存在。こうした人材が増えていくことで、障害のある人のアート活動の場は社会の中に広がっていくと考えています。
(SLOW LABEL ウェブサイトより)
これらの活動を通して培った経験が、パラリンピックの開閉会式という世界的な大舞台の成功にもつながっています。
【NHK】東京パラリンピック開会式ハイライト 多様性と調和の祭典、スタート | 東京パラリンピック(YouTubeリンク)
「今の世の中はエスカレーターのようなもので、そこに乗ることができなかった人は置いていかれてしまうような社会。でも、エスカレーターに乗っている人がみんな生き生きと輝いて、楽しく暮らしているかといったら、そうではないですよね?」
という栗栖さんからの問いかけ。
確かに、いじめや孤立、格差、パワハラなど対立も多く、
職場であればブラックな労働環境など、
多くの人が疲弊し、生きづらさを感じる社会になってしまっている側面があります。
それを改善するためにSLOW LABELのスローガン的フレーズ「be slow」、
つまり世の中の速度を少しゆっくりにする余裕を持つこと、
「規格外」の人をのけ者にするのではなく、
みんながそれぞれ苦手なことを隠さず、得意なことを活かせる社会を作ることの大切さ。
多様な人が参加できるインクルーシブな社会を作る上では、さまざまなコストがかかります。
例えば障害のある方が参加するには手話通訳を呼ぶ必要があるなど、ケースバイケースで対応方法が違うので、そうした知見を蓄積していくことも必要で、時間も費用もかかります。
しかし、それを活動のなかで実際にやってきた栗栖さんが言うからこそ、
「共生社会、誰もが輝ける社会ってそういうことですよね?」という言葉に説得力を感じました。
「誰も取り残さない社会」を理想として掲げるだけではなく、
現実的に取り組んでいかなければいけない局面にきていると思います。
栗栖さんが話してくださったことは、就職氷河期世代についての社会全体の課題を考えていくうえでも重要なポイントになると思います。
企業の皆さんにとっても、多様性のあるクリエイティブな組織づくりをしていくのに役立つお話だったのではないでしょうか。
スローレーベル公式サイトはこちら↓
https://www.slowlabel.info/
ソーシャルサーカス関連のイベント情報なども掲載されています。
また、認定NPO法人スローレーベルへの寄付も上記ウェブサイトより行うことができます。
個別キャリアコンサルティングも行いました
この就職氷河期活躍支援セミナーでは、毎回講演のあとに希望者のかたに個別のキャリアコンサルティングの時間を設けています。
キャリアコンサルティングというと、職業相談、仕事のお悩み相談といったイメージかもしれませんが、このセミナーでは、講演の内容の振り返りを中心にお話ししています。
講演を聞いて「いい話だったなー」で終わらせてしまってはもったいないので、
ご自身の会社や環境に活かせるのはどういった部分だったか? どのように活かせるか? を整理し、少しでも変化や行動につなげるサポートができたらという思いでやっています。
堅苦しいものではないので、ぜひ今後参加される皆さんにはキャリコンも受けていただければと思っています!
※写真は参加者の方に許可をいただいて撮影しました。
11月もセミナーあります!
11月15日に企業向けの第2回就職氷河期活躍支援セミナーを開催します。
今回はリレイション代表の祁答院が、
「人材を活かそう!−企業の人材育成力向上のために−」というテーマでお話しいたします。
詳細・お申し込みは以下のリンクをご覧ください!
【事業の趣旨をわかりやすく解説した動画はこちらです】
この記事を書いた人
西川 萌子
東京常駐スタッフ。2018年にキャリアコンサルタント資格を取得し、神山塾生のキャリアコンサルティングも担当。最近、サーカスの曲芸を練習する機会があり、皿回しができるようになりました。次はジャグリングボールにチャレンジしようと目論んでいます。
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