変わってゆくもの、変わらないものー“お父さん”に聞く神山塾ー | KATALOG
変わってゆくもの、変わらないものー“お父さん”に聞く神山塾ー

変わってゆくもの、変わらないものー“お父さん”に聞く神山塾ー

青木 詔子
青木 詔子

2017.05.24

こんにちは。青木です。

気まぐれなお天気模様、じわりと額ににじむ汗、
髪の毛のうねりから観測する湿気……。
「夏近し」といった気候になってきましたね。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

さて、今年度も神山塾生の募集をおこなっております。
募集についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
2017年度、神山塾募集開始します!

応募を考えている方のために、神山塾のことをもっと知っていただこうと、
前回の前田の記事を皮切りに神山塾に関連した記事を各自お届けすることになり、
私は「やはり、ここは外せない」と、
神山町にある一軒のお宅を訪ねに行ってきました。

私にとって神山塾期間内に大半の時間を過ごした場所であり、
神山の実家といっても過言ではないお宅です。

今回は、神山塾を見守り支えてくださっている“神山塾生のお父さん”のご紹介を中心に、
神山塾について語り合った内容をお届けしたいと思います。

 

 

絶妙なバランスのゆるさと安心感

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徳島市内から山へ山へと車を走らせ、川と平行したまばゆい新緑の道を走り抜けること約40分。
目的のお宅に到着です。

「いわまる」という文字が目印のこの場所、
歴代の神山塾女性陣の下宿先として毎回お世話になっている「岩丸百貨店」あらため、
岩丸さんのお宅であります。
岩丸さんは、神山塾生だけに留まらず、
ふらりとやって来た旅人や神山町の現状を知りたい学生など、
泊まる場所に困った人々にご自宅を宿泊場所として提供されています。
そのような経緯から、“ゲストハウスいわまる”という異名もあるほどです。

この日、待ち合わせの時間にどうしても間に合いそうになく、
電話をかけるもなぜかずっとドライブモード。
メールを送っても返事が来ないまま、約束の時間を過ぎてしまいました。

結局遅れること1時間半、慌てて訪ねると
「おう。いらっしゃい」
といつも通りの様子で迎え入れてくれる岩丸さん。
遅れたことを詫び、電話が繋がらなかったことを伝えると、
そこで初めて携帯電話のモードが変わっていたことに気づいたらしく、
「ありゃ。どうりで(電話が)おとなしいと思ったわ」と一言。
そして大幅に遅れて慌てふためいている私に、
「そないに何度も電話せんでも大丈夫やのに」
と当たり前のように言う。

初っ端のこのやり取りで、
私は神山町に来て間もないころの衝撃をさっそく思い出していました。

その衝撃とは、出会う人々の適度に肩の力が抜けているような「ゆるさ」です。

見知らぬ地域に入る際の緊張感というものは、
おそらく誰しもが持つものだと思います。
同時にそこで接する人とのあいだに年齢差があると、若年者が年配者に対して抱く、
何ともいえない“ビビリ感”といったものも生まれるのではないでしょうか。

世代の違いによるギャップ、
環境の違いによるギャップ……
そのようなギャップがあって当たり前と思っていましたが、
この「ゆるさ」に触れ、あると思い込んでいたギャップなど感じなくなりました。

それは固まっていないゼリーのような心許ないゆるさではなく、
半熟たまごのようにしっかり白身に守られているような安心感のあるゆるさ。
というのが、食いしん坊な私なりの例えです(笑)。

不安感、緊張感、ビビリ感を持ちながら、
えいや! と神山にやって来た当時の私は、
その「ゆるさ」と「安心感」にとても心救われました。

その後も「まあ、ええんちゃう」と外から来る人のオーダーを寛容に受け入れ、
思わず「え、いいの?」と拍子抜けする場面に何度も立ち会いました。

このゆるさと安心感に心掴まれる出会いこそが、
現在も多くの人を魅了している神山の最大の魅力のような気がしています。

そして岩丸さんもまた、その両面を併せ持つ代表的な存在です。

 

 

際立つ存在感

NPO法人グリーンバレー理事の岩丸さん(右)、佐藤さん(左)。
NPO法人グリーンバレー理事の岩丸さん(右)、佐藤さん(左)。

岩丸百貨店という呉服屋さんの店主であり、

NPO法人グリーンバレーの理事という肩書きを持つ岩丸さんですが、
移住希望者と地元の人をつなぐ不動産仲介者のような役目も果たしています。
独自の空き家情報を持っており、
なかなか家が決まらずにいた移住希望者が、岩丸さんの元を訪ねた途端に
トントン拍子で家が決まったという話は有名です。

「移住の流れも神山塾以降にけっこうできてきたと思うな。
そもそも(訓練期間の)半年が終わったら、
それぞれの地元に帰るものだと思っていたら、
思いの外(神山に)残りたいという子がおって、
そんな声があるから地元の人に空き家がないか聞いて回るようになって、
それで空き家情報を持つようになったんやな。
若い子が増えて、地域の人も元気もらって、
神山塾は地域の活力の原点と思うわ」
と話してくれた岩丸さん。

なぜ神山に残りたいという声が沢山あるのか、
以前岩丸さんが語った「田舎の価値は存在感だ」
(同じ人でも、田舎にいるのと都会にいるのとでは、
人の少ない田舎にいるほうが存在感が増す、という考え)

という言葉に答えがあるような気がして、
「あの言葉は名言ですね」と促すと、
「……そんなこと言ったんかいな」と本人は覚えていない様子(笑)。

それでも、
「場所が変われば、人は活きてくる。

半年もいれば良い面も悪い面も、
大体神山がどういう場所かというのがなんとなくわかってくるし、
人とのつながりもできてくる。
人とのつながりによって成長していくけんな」
と続けてくれました。

それは地域の方の、チャレンジを後押ししてくれるゆるさがあってこそだと思います。

必要以上に手をかけるわけではなく、
でも目は離さないという距離感で見守っていてくれる存在によって、
それぞれが力を発揮でき、
結果的に一人一人の存在感が際立つのではないでしょうか。

 

 

川の流れのように

エメラルドブルーの美しい鮎喰川(あくいがわ)。
エメラルドブルーの美しい鮎喰川(あくいがわ)。

神山町は変化のある町です。

実際、私がはじめて神山を訪れてからの4年の間にもさまざまな変化がありました。
数多くの出会い、新たな取り組み、新たな施設の増加。
「変化があるから面白い」というのも、私が神山塾を終えたあと、
地元に帰らないという決断をした理由のひとつでした。

でも今、当時の考えから少し変わったことは、
目に見える分かりやすい変化ではなく、
「一見変わらないようにみえるけど、少しずつ変わっている」
という変化に安心感を抱き、
惹きつけられているのだということです。

たとえば、作物を育てたり、景観を保ったりするためには草刈りが必須です。
その作業はとても地味で、目に見えてわかりやすい変化ではないかもしれませんが、
しなければ確実に草は生い茂ります。
自然発生的に、草が生えてこないわけではなく、
かならず誰かが手を加えているからこそ、守られているのです。

そんなことは当たり前だ、と思われるかもしれませんが、
そんな当たり前のことをたまに忘れてしまうことがあります。

草刈りを例に出しましたが、
それまでの景色・暮らしを守るためには、
常に変化していくことが必要です。

私は「変わらないために、変わりつづける」という言葉を座右の銘にしています。

この言葉を意識するきっかけになったのは、
歌人・鴨長明さんの方丈記冒頭の言葉
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」の解釈を知ってからでした。
「変わっていないように見えても、水は常に流れつづけていて、同じ水ではない。
それは人も同じだ」という考え方です。

神山の中心部を流れる鮎喰川(あくいがわ)。
この川の流れを見ていると、
より一層その言葉の意味合いがわかるような気がします。

岩丸さんにも座右の銘を伺ってみました。
「行雲流水(こううんりゅうすい)」という言葉が返ってきました。

恥ずかしながら、意味を知らなかったので調べてみました。

「空をゆく雲と川を流れる水のように、自然の成り行きに任せて行動すること」
とのこと。

岩丸さんのお宅が、町にやってくる多種多様な人を受け入れ、
町を離れた人にとっても“また帰ってこれる場所”となっているのは、
この柔軟な意識があるからこそでしょう。

まさに、変わらないために、変わりつづけている存在の象徴のように思えます。

そのような大きな存在にもかかわらず
「(塾生や若い子には)しびれるほどの知識をもらったわ。ほんまに」
なんて言うのですから、本当に敵いません。

その言葉にしびれながら、次期の神山塾生にも、
岩丸さんをはじめとする地域の方々との交流から
さまざまな姿勢をめいっぱい学んでほしいなと、しみじみ思うのでした。

 

神山塾の説明会あります

「神山塾に興味はあるけど、応募するか迷っている」
「具体的なカリキュラム内容が知りたい」
「生活面について不安がある」
「応募についてわからないところがある」

こんな方は、どうぞお気軽に説明会にご参加ください。

【東京】
会場は両日ともにちよだプラットフォームスクウェア5階会議室です。

5月26日(金)18:30〜20:30
お申し込み→http://kyj0526.peatix.com/
5月27日(土)10:30〜12:30
お申し込み→http://kyj0527.peatix.com

【徳島】
5月26日(金)18:30〜20:30
5月27日(土)14:00〜16:00
6月2日(金)18:30〜20:30
(※途中参加も可能です)

場所:
蔵本BASE
〒770-0042 徳島県徳島市蔵本町1-4-1
KAWASAKIビル 2F
(蔵本町交番向かいのビルです)

参加方法:
以下の宛先まで、メールで参加希望の旨ご連絡ください。
株式会社リレイション 担当:前田
maeda@relation-style.com
(参加申込者がいない場合は説明会を中止いたしますので、
必ず事前のご連絡をお願いします。)

※徳島では、説明会以外の日程でも事前にご連絡いただければご対応させていただくことが可能です。
上記担当・前田まで、ご連絡ください。

【名古屋】
6月2日(金)18:30〜20:30
ウインクあいち(愛知県産業労働センター)会議室1106会議室
事前予約は必要ありませんが、人数把握のため、
よろしければ以下のFacebookイベントページの「参加予定」ボタンのクリックをお願いします!
http://www.facebook.com/events/1557349030982800/

この記事を書いた人

青木 詔子

青木 詔子

神奈川県横浜市出身。神山塾5期、リレイション本社を経て、2019年春からは北海道浦幌町と故郷・横浜の二拠点生活に。社員の中では一番古株、一番口下手。でも人と話すのは好きで、お酒を与えるとご機嫌におしゃべりします。旅先のスリランカでセイロンティーに魅せられ、現在紅茶の修行中。

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