皆さん、こんにちは。プランナーの前田です。
私の今回のブログでは、神山塾のカリキュラムの1つである「参加型神山プロジェクト」の様子をお伝えします。
この「参加型神山プロジェクト」は、アドプト活動(※)やサテライトオフィスなど、現在の神山町の発展要因である『神山プロジェクト』を実際に参加・体験して学んでもらおうというものです。
今回は神山アーティスト・イン・レジデンス(KAIR)に関連した取り組みである森づくりを、元・NPO法人グリーンバレー事務局長のニコライさんと地元の森づくりに携わる方々に指導いただき、神山塾8期生とともに行いました。
※ アドプト活動 … アドプト=「養子」の意。
地元企業や地域住民が、地元の道路や川の土手といった公共物を自分たちの「養子」とみなし、定期的に空き缶拾いなどの清掃活動を行う、アメリカ生まれのボランティア制度。
ボランティアをする企業・住民と行政が互いに助け合いながら、地域をきれいにするといった「協働」の新たな取り組みとして注目を集めており、日本では最初に徳島県が導入した。
少し補足ですが、なぜこの森づくり活動が始まったかというと、過去にKAIRの招聘アーティストが神山滞在中に許可なく大粟山にアート作品を作ってしまった…。
アート作品の撤去も難しいので、山の整備を条件に以後山中にアート作品を作る許可を得た、という経緯だそうです。
神山塾生出身の私は「大粟山=アートの森」という認識でしたが、このような背景があったのですね。
以後はニコライさんがこの森作りを取り仕切り、町内の方々に呼びかけをしながら、定期的に活動を行っています。
前置きが長くなりましたが、以下、森づくり当日(9/15)の様子です。
森づくり体験(山道作り)の様子
この日は一日雨の予報でしたが、早朝に雨が止み、企画した私を含め皆ホッとした様子。
早速大粟山の山中に移動し、森づくり(山道作り)開始です!
なお、このパートは臨場感たっぷりに、写真多めでお伝えします(笑)。
まずは階段を作る位置を決め、丸太を固定する杭を打つ箇所に鉄の棒で下穴を開けます。
鉄の棒で穴を掘るのではなく、棒の重さを利用して地面に垂直に“下ろす”のがコツです!
仮穴に木杭をセットし、大きな木槌で打ち込んでいきます。
これがなかなか大変な作業でして…。
塾生に「前田さんも見てばかりいないで、見本を見せてくださいよ!」と言われてしまったので、神山塾OBの意地を見せようと頑張ったところ、翌日左腕が筋肉痛でパンパンでした(笑)。
8期生のトモさん。早くも下穴を開けるコツをつかんだ様子です。
都会ではなかなか経験できないというのもあって、楽しそうに作業をしていました。
男性に負けじと、女性メンバーも奮闘!!
杭をうち終わった後は、丸太と杭を鉄線で固定していきます。
これがなかなか難しい…。
先にこの作業を担当していたイノッチが、トモさんにレクチャーしています。
後半はこの作業がかなり早くできるようになったため、イノッチは周りから「匠」と呼ばれていました(笑)。
固定し終えた丸太の隙間に土をかぶせ、ならしをして階段が完成!
最後は1段は、ガツンとニコライさんに締めていただきました。
開始から約3時間、計21段の階段が完成しました。
アートツアーの新たなルートが完成。お見事です!
「森づくり」から感じてほしかったこと − 地域の現状を知り・地域の人々から学ぶ −
私は三重県の四日市市出身で、鈴鹿山脈の麓にある町で育ちましたが、急速に団地化が進んだ地域で、周囲の山林環境についてはあまり意識をしたことがありませんでした。
昨年の11月に神山塾生として神山町に来た際も、「なんて綺麗な山の景色なんだろう」と。
しかし、実際はこの綺麗な山の景色も人工林としての問題を抱えていることを森づくり体験を通して学びました。
写真は、階段を作ったそばの大粟山の様子です。
この場所は間伐などの手入れがされており、山肌は草が生え緑色になっています。
しかし、神山町の山林の多くは人出不足などもあり間伐が行き届かず、針葉樹が密集し地面に光が届かない状態です。
そうなった森は、山肌に草が生えず土が固くなり、雨が吸収されずに表面を流れるようになって、やがて保水力を失っていきます。
神山町の町を流れる鮎喰川の水量は、30年前に比べ約3割にまで減っているそうです。
このKATALOG WEBでも取り上げている神山町上分・江田地区の棚田など、我々が次世代に残したいと感じる昔ながらの風景は、そもそも人の手(知恵)で作られたものです。
森もまたしかりで、人の手で育てていく必要があるのですね。
写真は、この日森づくりの講師をしていただいた藤本さん。
藤本さん「その“しゃが”は、踏むと滑るから気をつけなあかんぞ。しゃがは昔うさぎの餌にしとったんじゃ。」
前田「なんで“うさぎ”なんですか?小学校とかで飼っていたんですか?」
藤本さん「ああ、小学校と違う。この辺では子供はうさぎを、大人は牛を飼うとった。」
階段作り以外にも、地域の生活や魚の採り方など、いろいろなことを教えていただきました。
こういった地域の方との会話の中には、暮らしの知恵など多くのことが学べ、私もとても勉強になりました。
以上で山道作りレポートは終了です!
ニコライさん、藤本さん、神山塾8期生のみなさん、本当にお疲れ様でした。
山道作りを終え、ちょっと一息。
最後に、私が森づくりをはじめ、地域の活動への参加から神山塾生に感じてほしかったことを。
神山塾は「地域コーディネーター養成科」であり、地域に入り込んでその現状を理解し、地域の人々から学ぶことはコーディネーターにとってとても大切なことです。
この山道作りも、現時点では塾生にとって意味を見出せないことかもしれません。
しかし、神山塾の期間に、積極的に地域や地域の人たちと関わり合ってほしい。
私もコミュニケーションが得意な方ではないので、徐々に、各々のペースで大丈夫。
きっと、そこから何か今後の糧になるものが得られると思いますし、その姿勢を地域の方々もきっと見てくれているはずです。
「神山塾日誌」− 参加型神山プロジェクト 森づくり体験 −
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この記事を書いた人
前田 優
地域マネジメント事業のプランニング・ディレクションを担当。2019年から熊本県南小国町で「地域人材マネジメント×温泉旅館」のプロジェクトにチャレンジ。民藝品や伝統工芸品が好きで、最近のマイブームは酒器。お刺身をアテにお気に入りの酒器で日本酒を呑むのが何よりも幸せ。
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