海陽中学校(総合学習授業)・地域産業コース3年の生徒による「地域発信」、第2弾!
今回のテーマは、「漁業観光」の可能性です。
自分たちの故郷である徳島県海陽町の魅力を、鞆浦漁港をフィールドに取り上げています。
生徒さんの率直な感想や表現も楽しんでもらえる記事に仕上がっていると思います!
〜 〜 〜
はじめまして、現在15歳真っ只中を走っております。「とろぴかるふぃっしゅ株式会社」チームリーダーの高間です。チームメンバーは野畑、谷岡、山本、坂東、叶岡、そして僕を含めた6人です。
突然ですが、皆さまは鞆浦漁港をご存じでしょうか? 鞆浦漁港は、徳島県海陽町鞆浦にあります。
僕たちは、9月28日、10月5日、10月12日の3回にわたって、鞆浦漁港で漁業観光に関する体験をさせていただきました。体験内容は、1回目:魚釣り体験、2回目:魚さばき体験、3回目:漁協の職員の方へのインタビューです。
なぜ僕たちのチームが体験場所として鞆浦漁港を選んだのかというと、僕たちが住む海陽町では、一体どんな魚が釣れたり、水揚げされているのか知りたいと思ったからです。
このブログでは「とろぴかるふぃっしゅ株式会社」のメンバーが鞆浦漁港で体験したり取材したりした記録をお届けします。そして最後に、活動全体を振り返り、メンバーそれぞれが感じたことをお伝えします。
それでは、Let’s GO!!!
1回目(9月28日)魚釣り体験
3回にわたる現場体験の1回目は、鞆浦漁港で魚釣り体験をしました。担当は、山本と谷岡です。
そもそも、漁港で釣りをすることになったきっかけは、僕たちのチームリーダー(高間)が漁業体験をしたいと言い出したからです。だから、正直に言うと、僕たちは釣り体験にあまり乗り気ではありませんでした。漁港へ向かう道中、僕たちは何を思っていたかというと‥‥。
(山本)「魚とかあんまり興味ないし、面白くないだろうなー」。
(谷岡)「どんな魚が釣れるんだろうなー、餌臭そうやな」。
(あまり大きい声では言えませんが・・・)。
そんなことを思いながらも漁港へ到着し、漁師の方々(確か8人ぐらいいたと思います)から説明を受け、サビキ釣りの準備をすることになりました。
サビキ釣りとは、竿の先に餌を入れたカゴをつけ、餌で魚をおびき寄せ、竿についている針にひっかけて魚を釣るという方法です。そのため、まずは竿を組み立てることから始まります。針やカゴをつけたりガイドに糸を通したりと、慣れない作業ばかりで、とても時間がかかりました。
竿の組み立ての次は、竿の先につけたカゴに餌となるオキアミ(エビ)を入れます。オキアミをカゴに入れようとしたまさにその時、僕の手にオキアミがついてしまいまいした。恐る恐るその手をかぐと、とてつもない強烈なニオイがしました。「このニオイを一生忘れることはないだろう」。僕はそう思いました。
その手で竿を握りしめながら、釣り糸を海へ投げ入れ、とうとう釣りが始まりました。この日、釣りができるのは1時間だったのですが、待っても待っても魚はかからず、時間だけが過ぎていきました。
それからしばらくして、女子の竿にヒットが来ました。その流れに乗るように他のメンバーの竿にもヒットが来ました。
しかし、僕たちの竿に魚がかかることはありません。
「絶対釣れんやん‥‥」。
そうあきらめていた時、とうとう僕たちの竿にヒットがきました。あわてて竿をあげると、魚は途中で海へ落ちていきました。とてもショックでした。
この釣り体験を通して、僕たちは釣りが多くの人に愛され続けているその理由が分かりました。魚は釣れなかったものの、釣りがあまり好きではない僕たちでもヒットした時は、とても嬉しい気持ちになりました。このヒットした瞬間の喜びや嬉しいと感じる気持ちは、老若男女問わず共通するものだと思います。
2回目(10月5日)魚さばき体験
魚釣り体験から1週間後、現場体験2回目はな、な、な、なんと…
魚さばき体験に行ってきました!担当は、高間と野畑です。
ここからは魚さばき体験の様子を僕たちの視点からお伝えしていきます。
調理場に入ると、謎の巨大な魚といかにも魚さばきがうまそうなおっちゃんがいた!
名前を聞くとそのおっちゃんは「惣田です」と名乗った。巨大な魚の正体はなんとカツオだった。生まれて15年…。切り身しか見たことがない僕には未知の出会いだった。まだ生きていると思ったが、息をせず、白い箱の中で静かに眠っていた。
「さぁ、さばいていこう」。
おっちゃんのこの一言が、体験のスタートの合図だった。まずは惣田さんがカツオさばきの手本を見せてくれた。
- カツオさばきの手順
- エラなどを真水で洗い、寄生虫を洗い落とす。
- 包丁を縦におろし、カツオの頭を落とす。
- 肛門の方から頭の方へ腹をさき、内臓を取り除く。
(胃袋の中に、ランダムに入っている小魚や謎の生物を見るのも、魚さばきの面白いところ)。 - 三まいに下ろす。
(切り身、中骨、切り身に分けるのだが、中骨に身が残ってしまい悔しい思いをした)。 - 腹骨をとって、皮を引く。
(皮引きは、僕の苦手な分野の一つになった)。 - 刺身状に切って盛り付け、完成!
(身が柔らかくて、切るのが難しかった)。
魚さばきで一番難しいとされる皮引きの最中だった。「ガチャン…キー」という音とともに扉が開いた。
そこには、首に青いタオルをかけ、顎にはひげを生やしたダンディーな第2のおっちゃんがいた。
そのダンディーおっちゃん(以下、ダンおじ)は、一言こう言った。
「なんしょん?」
ハスキーボイスだった。その言葉はバリバリの阿波弁だ。
そのダンおじは「俺が漁師さばきというものを見せたるわ」と言い、おもむろに包丁をとった。そして、白い箱の中で眠っているカツオを手にとった。右手にキラリと輝く出刃包丁、左手には同じくらいキラリと輝くカツオ。
あの魚さばき名人惣田さんのスピードをはるかに超える速さでサクサクさばいていく。わずか1秒足らずでさばき終えた。豪快だった。唖然だった。度肝をぬかれた(魚だけに、キラーン)。
しかし、ぼくは気付いてしまった。
「豪快、速い。しかし中骨に身がいっぱい残っている」と。ダンおじはこう言った。
「このカツオは身が柔らかすぎじゃな」。
僕は言い訳に聞こえたが、そこはあえて触れず、納得したかのように大きく頷いた。そのダンおじはさばき終えると、次の目的地に旅立っていったのだった…。
この体験を通して、2つ思ったことがあります。
1つ目は魚さばきはとても難しいけど、やってみると想像以上に楽しいということです。
皮引きは惣田さんにやってもらったくらい本当に難しかったけれど、胃袋の中を見たり、さばき終えた達成感を得ることができたので本当に楽しかったです。
2つ目は「カツオは美味い」ということです。
僕は赤身があまり好きではないほうで、カツオの叩きを食べる際に、惣田さんが「秘伝のタレや」と言って、自家製のピリ辛ダレをかけてくれました。そのタレの作り方も教えてくれたのですが、カツオのたたきと秘伝のタレの相性が良すぎて、食べるのに夢中になってしまい、作り方を聞き逃してしまいました(残念‥‥)。
とっても楽しく、美味しい体験でした。
3回目(10月12日)鞆浦漁協・森本さん インタビュー
魚さばき体験から1週間後。現場体験3回目は漁協の方へのインタビューです。
鞆浦漁港での漁業体験や、漁師さんたちの仕事について知りたいと思い、鞆浦漁協の職員の森本さんにお話を伺いました。担当は、坂東と叶岡です。
現在は牟岐町に住み鞆浦漁協で働いている森本さんですが、経歴にとてもギャップがあります。高校を卒業してしばらくの間航空自衛隊に勤めてから「保育士なろう」と思いたった森本さんは、短大で2年間勉強した後、保育士になったそうです。
その後7年間、保育士として働くことになるのですが、海が好きな森本さんは徳島に移住したいと考え、保育士を辞めました。徳島に住むためのお金を貯めるために次に就いた仕事はお米屋さん。そこで4年間働いてから、牟岐町にきました。
最初の質問は、鞆浦漁協で働いている森本さんの仕事について。漁協の職員さんの仕事を色々と教えてもらいました。
「例えば、魚の血を抜いて、美味しい状態で魚を出荷するとか。キレイに箱に詰めて、見栄えをよくするとか。後は、できるだけ氷をいっぱい使って魚の鮮度を保って出すとか。そういうことを漁師さんたちと協力したり、僕たちからこうやったらいいんじゃないかって話しをしたりして普段は仕事をしています」。
地元に住んでいる私たちでさえも漁協の職員さんがどのような仕事をしているのか知りませんでした。漁協の中で、森本さんは魚を売る“競り”の担当をしています。
「本来の競りじゃなくて入札って言ってね。札にその魚を買いたい値段をかいて僕にこう提示してくるんです。これを僕が見て一番高い人が買うというシステムです」。
入札という魚の買い方を知らなかったし、お話を聞けば聞くほど、漁協の職員さんの仕事は複雑だということが分かり、私たちにはできないと思いました。
「話は変わるんですけど、今とれている魚は何ですか?」と聞いてみると、
「たくさん言うていいですか?めっちゃ言うで。」と標準和名と鞆浦漁港の漁師さんたちの魚の呼び方を教えてもらいました。
●標準和名(漁師さんたちの言葉)
- タカノハダイ(タカ)
- カワハギ(シロハゲ)
- ブダイ(エガミ)
- ムジナ(グレ)
- オジサン(メンドリ)
- コロダイ(ヨノミ)
- オオモンハタ(イギス)ちょっと高い魚
- カンパチ(シオ)小さいときはシオ、大きくなるとアカハナ
- ハマチ(ハマチ)ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ 出世魚で大きくなるとブリ
- カツオ(カツオ)
- キハダマグロ(キハダマグロ)
- 小さいキハダマグロ(ビン)
- ツムブリ(トリカジ)取り舵にしか回らないのが由来らしい ブリよりも小さい
次の質問は、鞆浦漁港でできる漁業体験について。
鞆浦漁港では、11月から次の年の7月まで大敷網の船に乗って漁の体験をすることができます。また、自由に漁協の市場を見学したり魚の水揚げを見たりできます。
「何でここでは、漁業体験をやっているんですか。」と、質問をすると、
「難しいんですけど、いろんな人に魚をとる現場や漁師の苦労を知ってもらって魚をいっぱい食べてもらいたいからです」と答えていただきました。
インタビューの中で、この言葉が一番心に残っています。なぜなら、小学校のときにした大敷網の体験したことを思い出し、そんな思いで体験をさせてくれていたことを今まで知らなかったからです。私たちの地元、海陽町の漁師さんたちの苦労や熱い思いを初めて知ったインタビューでした。
編集後記
皆さま、いかがでしたか?
鞆浦漁港での体験・取材を通して「とろぴかるふぃっしゅ株式会社」のメンバー6人それぞれがどんなことを感じたり、考えたりしたのか。
最後に、そのコメントを抜粋してご紹介します。
(山本)前までは「海陽町って何もないなー」と思っていたけど、今回の体験を通して、実は自分たちが知らないだけで海陽町にも沢山魅力があるんだなと感じました。
(谷岡)サビキ釣りでは魚が釣れなかったけど楽しかったです。
(高間)魚さばきの楽しさを改めて知ることができました。
(野畑)初めて魚をさばいたので難しかったけどいい経験になりました。
(叶岡)海陽町に住んでいるのに、知らないことが沢山ありました。
(坂東)魚を釣ったり、漁をしたりするのは自分が思っていたより大変でした。
今回の活動では、海陽町に住んでいる自分たちも知らなかった海陽町の魅力を発見しました。体験・取材先で出会った海陽町の方々が、自分たちに温かく接してくださったこと。
活動を振り返り、こういった「人の温かさ」も海陽町の魅力の一つだと気づきました。
体験・取材でお世話になった皆さま、そしてここまで読んでくださった皆さま、ありがとうございました!
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