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紙が生まれるまで~はじめのはじめの第一歩~

紙が生まれるまで~はじめのはじめの第一歩~

みなさん、こんにちは。神山塾KATALOGコース2期生の宮前です。
そう名乗るのも、あとわずかとなってしまいました。

現在、神山塾KATALOGコースでのラストプログラムとして、
“スモールプロジェクト”に取り組んでいます。
今後の暮らし方や働き方へのチャレンジとなるよう、
それぞれがテーマを決めて取り組んでいます。
略して“スモプロ”です。

私はこのスモプロに、“自分の文字”を使ってみようと思いました。

お習字を習ってはいましたが、特に上手いとも、
自分の文字を好きだとも思えませんでした。
でも、“味のある文字”に憧れ、「自分も書いてみたいな……」という思いはずっとありました。

これまで数々行ってきたKATALOGコースでのイベントや制作物で、
「ここの字、
書いて~」と周りから言ってもらい、
何度か登場した“自分の文字”。

そんな頼まれごとを通して「字を書く」ことが“好き”ということ。
人の役に立てる“自分の手段”の一つだと、思えるようになりました。

そんなこんなでスモプロは”紙と舞文字”と題し、
「枠にはまらない表現を愉しむ=舞(MY)文字」
を使った書を愉しむイベントを計画中です。

文字を表現するのに紙は必須。
さまざまな紙や和紙を試したいと思う中、
外せないのが徳島県の伝統産業である阿波和紙です。

調べていると、以前に紙漉き体験をさせていただいた「阿波和紙伝統産業会館」が、
紙の原料である「楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)刈取り講習会」をされてることを発見。

伝統産業である和紙に興味津々、紙に触るとテンションが上がる、
紙好きな自分としては行かないわけにはゆきません!!

今回はその講習会レポートをお届けします。

 

木からはじまる第一歩

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徳島県北東部に位置する吉野川市、阿波山川駅から徒歩15分の場所に、
阿波和紙伝統産業会館があります。のどかな田園風景が広がる地域です。

車を持っていない私は、家からここまで約1時間半かかります。
しかし、そんなものは序の口で、この講習会の参加者は広島や東京、
遠くはオーストラリアから来られた方もいます。
仕事や趣味など、和紙への関心を持った20人ほどが集まりました。

まずは会館に集合して楮畑に移動します。
到着すると早速、刈取り開始です!

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1月下旬の現在、楮の長さは1年で3~4mまでに成長しています。
太さは直径2~4cmくらい。栽培は比較的容易で、毎年刈り取れるそうです。

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楮の木を根元から5㎝ほど上で切ります。
そこからまた1年かけて枝が伸びていくそうです。

のこぎりの扱いに慣れておらず、幹の中で引っかかると、
うまく刃を進められずに手こずりました。
少し斜めに傾けながら切るのがコツだとか。

成長の過程で横枝がたくさん出るが、幹を太く育てるために横枝を摘み取る「芽かき」がされている。摘むときは幹の皮を傷めないよう気をつけないといけない。
成長の過程で横枝がたくさん出るが、幹を太く育てるために横枝を摘み取る「芽かき」がされている。摘むときは幹の皮を傷めないよう気をつけないといけない。

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切った枝は上部の横枝をカットし、1.2メーターほどに切り揃えます。
後でわかりましたが、枝が蒸し器に入る長さなんですね。

切り揃えた楮を束にして軽トラに運びます。
今期、最後の刈取りなので、畑の楮は1本残らず切ります。
この作業が終わるまでは、次の作業に移れません。

みんなでひたすらに、黙々と作業をしました。

2 人1組でそれぞれの作業をする参加者たち。
2 人1組でそれぞれの作業をする参加者たち。

ようやく楮の刈取りを終え、次はすぐそばにある三椏の畑へ移動します。

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三椏は2mくらいの高さです。
枝が3つに分かれていくので、「三椏(ミツマタ)」と呼ぶとか……。
ほかにも産地によってさまざまな呼び方があったようです。

三椏の繊維は柔軟で細くて光沢があるのが特徴で、
日本銀行券の原料にも使用されているのだとか。

こちらは苗を植えてから3年で収穫できるそうです。

より太く立派な枝を見定めてもらい、1人1本を切りました。

この三椏の蕾がとても可愛らしく、黄色い花をつけるようです。

持って帰って飾りたい、とお願いすると、
「この部分は使わないのでどうぞ」と快く了承してくださいました。

 

 

甘い甘い木の香り

別の作業場に移動すると、
ちょうど先ほど刈り取った楮が蒸しあがりの時間になっていました。

写真奥から、ブルーシートを被っているものが蒸し器、手前に向かって順に楮、白い枝が皮を剥がした後の楮、手前が三椏。
写真奥から、ブルーシートを被っているものが蒸し器、手前に向かって順に楮、白い枝が皮を剥がした後の楮、手前が三椏。

楮は蒸し器で2時間ほど蒸します。
この蒸し器から、何やら甘~い、おいしそうな香りが漂います。

この匂い……何でしょうか?
サトウキビを焚いたら、きっとこんな匂いに違いない!
それとも、さつま芋を蒸した匂い……?と勝手に思っていました。

ああ、お腹が減ってきた…。

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蒸された楮は外側の皮が縮まり、中の芯が切り口から出てきました。

先の茶色い部分を握って、
ぞうきん絞りのようにくるっと回すと簡単に芯と皮が剝がれます。

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そのまま一気に下に向かって剥がすと、一枚の皮になります。
しかしきれいに剥がすには、なかなかコツがいります。
途中で皮がバラバラと裂けてしまうことも。

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次は皮の外側の茶色い表皮を削りとります。

凹凸のついた鉄棒に皮をかけ、
左右にしごくと外側の黒皮が徐々に剥がれていきます。

皮は乾燥すると水分がなくなり固くなるので、
上部を縛ってまっすぐ保てるように干します。

この光景、何に見えますか? 山の中でなければ……海に漂う昆布にしか見えません!!
この光景、何に見えますか? 山の中でなければ……海に漂う昆布にしか見えません!!

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この皮の内側の白い部分(靭皮)のみが、和紙の原料となるそうですが、
黒皮、8分、6分、白皮など、和紙によって使う状態を変えるそうです。

 

 

さあ、綱引きの時間です!

ようやく楮の処理が終わり、次はいよいよ三椏の皮を剥がします。

これがなんともおもしろい!!

楮と同じように蒸しあがった三椏を、
まずは同じ要領で根元から黒皮を少し剥がします。
そして芯を持つ人と、黒皮を枝先に向かって引く人の2人1組で持ちます。

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そのまま綱引きのように一気にお互い引っ張り合うと……。

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皮がズルズルと剝けていきます!

ところがこれ、女性同士だとなかな力が足らず、
こんなにおもしろいように一気には剥けませんでした。

皮を剥いだ後の三椏はなんとも美しく味があるので、
アーティストの方がオブジェや装飾に使われるとか……。
私も1本いただいて帰りました。

一日の作業はここまでです。

ずっと立ちっぱなしで、力も体力もいる作業を終え、
帰るとぐったりと疲れていました。

紙が作られるまでのまず始めの段階ですが、
原料の処理にこんなに手間と労力がかかるとは、
大変な作業だと感じました。

次の段階である“煮熟(しゃじゅく)⇒ちり取り⇒打解“といった原料の加工処理も、
機会があればぜひ見てみたいと思いました。

 

 

伝える方法のひとつとして

今回は“紙のはじめの一歩”を知る貴重な機会となりました。

そして私も今、新たな一歩を踏む、はじめの段階にいます。

私がこの神山塾KATALOGコースを志望した理由の一つに、
地域の伝統産業を伝える発信方法を考えたい、というものがありました。

しかし、その産業に対する深い知識を持ち合わせているわけではありません。

私という個人が、その土地で知った産業をどう伝えるか、
ということに向き合ったとき、
塾生期間の終盤に見えてきた、私の“できること”。
文字を使ったスモプロ、“紙と舞文字”という手段を用い、
その土地の産業とリンクして発信したいと思いました。

伝統産業へのアプローチへの入口は、難しい知識の話でははく、
私らしい“個”の手段を使えるようにしていくこと。

それを誰かに興味を持っていただけるように伝えることができれば、
それぞれが伝統産業への興味を持ち、広がっていくかもしれません。

この7か月間で“個”を出すということに、一筋の光が見えた気がします。

私の“できること”として背中を押してくれたKATALOGメンバーのみんな、
相談にのってくださった担当者、
お世話になった皆さま、
本当にありがとうございました。

阿波和紙伝統産業会館
徳島県吉野川市山川町川東141
http://washi.awagami.or.jp/hall/event/eventlist.php